シルクロード・アンサンブル 6

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エンチャントメント~魅惑の響き
NHKスペシャル「新シルクロード」
オリジナル・サウンドトラック


5月8日(日) ETV特集
ヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブルの仲間たち
~対話と創造の8日間~


【シルクロード・アンサンブルの理念2】
Communicating
~旅をして世界の人々と交流すること~


2004年の6月から7月にかけて、
シルクロード各地をメンバーたちが旅しました。
そしてそこに息づくメロディーを収集したり、
古代の楽器の音色を探ったりしました。

ヨーヨー・マ
  「私たちが旅を大切にする理由は、
   世界各地のすばらしい文化と出会うことで、
   人間というものがいかにクリエイティブな存在なのかを
   再確認したいからです。
   アジアからヨーロッパを結ぶ広大な地域であるシルクロード、
   そこにはさまざまな民族が生み出したさまざまな文化があります。
   山で暮らす人々は山の文化を、砂漠で暮らす人々は砂漠の文化を、
   それぞれ生み出してきました。
   そして、人々は何千年も前から互いのことを知りたいと願い、
   交流してきました。
   私たちは旅を通じて、こうした人間のおおいなる創造性に
   触れたいと願っています。」



シルクロードに旅立った最初の音楽家は、
中国笙の演奏家、ウー・トンさんです。
ウー・トンさんは、中国の伝統音楽の魅力を伝えたいと
世界各地で演奏活動を続けています。
またウー・トンさんは最近まで、
中国の人気ロック・バンドのヴォーカリストでもありました。
今回の旅は、その独特の感性に期待を抱く
ヨーヨー・マさんのすすめによって実現したものでした。

ウー・トンさんが向かったのは、
中国・新疆ウイグル自治区にある少数民族カザフ族の村です。
ウー・トンさんは数年前、偶然このメロディーを耳にしました。
その時、これが遊牧民、カザフ族に伝わる
『ツバメ』というメロディーだとわかりました。
しかし、その由来はわかりませんでした。
訪ねたのは標高2,300mの高地にある、
カザフ族が夏の間だけ暮らす村です。
まず、このメロディーがカザフ族の人々の間に
歌い継がれているのか村人にたずねした。

ウー・トン
  「ツバメの歌を知っていますか?」
村人
  「ずいぶん昔の歌です。」

村人たちはドンブラという民族楽器に合わせて歌いはじめました。

村人
  「カザフ族の若者が昔、一人の女の子を好きになりました。
   しかし遊牧生活を送っていたため、なかなか会えませんでした。
   やっとのことで女の子を見つけたとき、
   この歌を歌って愛を告白しました。
ウー・トン
  「それはよかったですね」
村人
  「女の子の名前はツバメでした。
   それで歌の名前もツバメにしたと伝わっています。」
ウー・トン
  「めでたく結婚できるなんて、音楽の力はすごいものですね。」

ウー・トン
  「このメロディーは、カザフ族の人々がツバメを崇拝して
   歌ったものだと勝手に思い込んでいました。
   しかし恋の歌だと知り、とても驚きました。
   このメロディーを世界中の人たちの記憶に
   とどめられるようにしたいです。」

2004年秋、ウー・トンさんはタングルウッドでの音楽づくりの合間に、
ヨーヨー・マさんに旅の報告をしました。

ヨーヨー・マ
  「君は民族音楽だけでなく、クラシックやロックも演奏できますね。
   そして、とても才能豊かな人だと思います。
   今回は『ツバメ』というメロディーを採取してくれましたね。」
ウー・トン
  「私が偶然耳にしたこのメロディーをずっと忘れられなかったのは、
   本当に美しいと感じたからです。
   あなたがチェロで弾いてくれたらすばらしくなると感じました。」
ヨーヨー・マ
  「なぜ現地に行ってまで、その由来を知りたいと思ったのですか?」
ウー・トン
  「シルクロードをテーマに音楽を創るポイントは三つあります。
   伝統的なメロディーを集めること。現代的な編曲を試みること。
   そしてインスピレーションを大切にして皆で即興演奏することです。」
ヨーヨー・マ
  「期待していますよ」
ウー・トン
  「中国には素晴らしい民族音楽がたくさんあります。」
ヨーヨー・マ
  「そのとおりだね。」
ウー・トン
  「中国の民族音楽は一般に、旋律が単一で
   ハーモニーもそう複雑ではありません。
   しかしリズムには豊かな表現力があります。
   美しい旋律と豊かなリズムが組み合わさると、
   深い精神性が表現できますし、人を感動させることができます。」
ヨーヨー・マ
  「今回の旅で、あなたの知識は豊かで、
   より奥深いものになったと思います。
   中国の伝統音楽を世界に広めていきたいですね。」

ウー・トンさんはツバメのメロディーをヨーヨー・マさんのチェロが奏で、
中国の民族楽器、笙、琵琶と語り合うように演奏してみたいと考えました。

中国の民族楽器による導入から『ツバメ』のメロディーへ。
イランの弦楽器、そしてインドの太鼓が織り成す響きが、
シルクロードを行き交ったさまざまな民族の姿を浮かび上がらせます。
ウー・トンさんの旅が、『ツバメ』のメロディーに新たな命を吹き込みました。

アメリカ・マサチューセッツ州にあるタングルウッド音楽センターでの8日間。
その半ばを過ぎて、次々と新しい楽曲ができていきました。
音楽創りが順調に進み、上機嫌なヨーヨー・マさん。

ヨーヨー・マ
  「あちらこちらから音楽が聞こえて、わくわくするよね。
   インドの曲やペルシャの音楽がよい仕上がりになっているよ。」

この日は中央アジアの民謡をもとに、音楽創りが行われました。
アルメニアから来たゲボルグ・ダバギャンさんは、
中央アジアの遊牧民に伝わる笛、ドゥドゥークの演奏家です。
ダバギャンさんが奏でるメロディーをバイオリン奏者たちが引き取って、
即興で演奏しようとしています。

バイオリン奏者
  「ドゥドゥークのソロに続いて、D(レ)の音まで下がってきたら、
   こういう風に入っていこう。」

緊張感が高まります。
ヨーヨー・マさんはこうしたリハーサルの繰り返しの中から
本当の信頼が生まれると考えています。
続いてアゼルバイジャンの伝統歌謡、ムガームとの
コラボレーションがはじまりました。
楽譜に記されることなく伝承されてゆく中央アジアの伝統音楽。
ヨーヨー・マさんは、二人の音楽家がどのように音楽と向き合い、
演奏家として生きていこうとしているのか聞いてみたいと考えました。

ヨーヨー・マ
  「あなたたちの歌声や笛の音色は、
   天から授かったもののように感じます。」
アリム・カシモフ(アゼルバイジャンのムガーム歌手)
  「アゼルバイジャンには、聞く人の心を揺さぶる優れた歌い手が
   たくさんいます。
   真心を込めて歌うことのできる人は、
   神によって選ばれた人だと思います。」
ゲボルグ・ダバギャン(アルメニアのドゥドゥーク奏者)
  「演奏をしているとき、私たちは芸術の神、ミューズの中にいます。
   そこは説明できない場所です。
   自分の意識がどこにあるのかがわからなくなるのです。
   それは生きているという実感をもつ最高潮の瞬間です。」
ヨーヨー・マ
  「あなたたちが演奏する姿には、人間存在を超越した何かを感じます。
   自分の内面に意識を限りなく集中し、静かに芸術を見つめる。
   こうした瞬間に音楽というものは生まれてくるのだと思います。」

3人の演奏家たちの会話は、
次第に流動化する世界における音楽家の役割とは何かに及びました。
アルメニアとアゼルバイジャンには、
1988年から1994年まで領土を巡って紛争が続き、
1万8千人の犠牲者がでた不幸な歴史があります。

ヨーヨー・マ
  「アゼルバイジャンの首都、バクーでは、
   伝統文化の復興がはじまったと聞きます。
   伝統歌謡、ムガームを演奏する劇場が再建されたのですよね。
   紛争を経たアゼルバイジャンで再び芸術を盛んにしようという動きに
   特に若者たちはどのような反応を示していますか?」
アリム・カシモフ(アゼルバイジャンのムガーム歌手)
  「若い演奏家たちはムガーム劇場に新しい風を吹き込んでいます。
   アゼルバイジャンの人々はみな喜んでいます。」
ゲボルグ・ダバギャン(アルメニアのドゥドゥーク奏者)
  「芸術に触れるとき人間は、大地から生まれたことを再認識します。
   大地とつながることによって、人間は善良になれるのです。」
   特に若者たちはどのような反応を示していますか?」
アリム・カシモフ(アゼルバイジャンのムガーム歌手)
  「人々が善良になれば、一体誰が戦争なんて望むでしょうか。」
ゲボルグ・ダバギャン(アルメニアのドゥドゥーク奏者)
  「人間が善良になれるように手助けするのが音楽家の使命です。
   音楽家が世界平和のために何ができるのかを示していきたいです。」
ヨーヨー・マ
  「提案があります。何年か先、再び集まりましょう。
   アゼルバイジャンのバクーに、
   そしてアルメニアの首都、エレバンにメンバー全員が集まりましょう。」

異なる文化を背負う音楽家が、
対話を重ねながら音楽を造り出していく。
ヨーヨー・マさんの理想です。

Mohini (Enchantment)/Yo-Yo Ma;The Silk Road Ensemble

イントロダクション
シルクロードへの想い
唐の時代の中国から21世紀へ
シルクロード・アンサンブルの理念1
Mentoring ~東西の音楽の融合~
【シルクロード・アンサンブルの理念2】
Communicating ~旅をして世界の人々と交流すること~
シルクロード・アンサンブルの理念3
Creating~ 「文化の大使」となり、創造的に音楽を創りだすこと~
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by mamorus7 | 2005-05-08 23:06 | 芸能


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